1.吃音問題解決の方向


1.吃音問題解決の方向

 吃音は、発語が乱れたり阻害されるもので、難発・連発・伸発といったタイ
プに分かれ、様々な随伴症状もあります。吃音の原因は心理面にあると、一般
的に考えられています。それは、ある場面で酷く吃った吃音者が別の場面では
流暢に話せる場合が多く、発声器官の器質的な障害ではなく、心理的な緊張が
発声を阻害していると考えられているからです。確かに、正音者でも酷く緊張
すると吃る場合もあります。しかし、我々吃音者は心理的な緊張が原因で吃る
訳ではないと思います。吃音者は、家族や友人、同じ吃音者仲間とリラックス
した状態で話す場合でも吃りますし、寧ろ、少し緊張した時の方がうまく話せ
ます。心理的緊張が吃音の症状に多少影響するのは確かですが、吃音者は緊張
したり不安になるから吃るのではありません。吃る反応を繰り返した結果、話
す時に緊張したり不安になるのです。吃るから不安や恐怖を感じるのです。
 
 吃音の原因は完全には解明されておらず、吃音の原因や治療法、その対応に
ついても様々な考え方があります。東京言友会にも、「吃音は治らない」とい
う考え方と「訓練によって吃音は改善できる」という考え方があります。また、
「吃音は治すものではなく、受容すべきものだ」と主張する人も居ます。私個
人は、吃音に対する対応や解決策は個人の状況で変わるものであり、個人が判
断し決めるものだと考えています。吃音の症状は重い人と軽い人で極端な違い
がありますし、年齢や仕事・家庭といった生活環境も違います。全ての吃音者
に「吃音の受容」による問題解決を求めるのは無理があります。吃音の受容も重
要だし、症状の改善も必要です。どちらかの二者択一ではなく、吃音を受容し
ながら症状も軽くする、といった柔軟な考え方が必要だと思います。

 また、職場や学校での人間関係や仕事への取組み等、生活環境との関わり方
を変えて行く事で吃音問題を解決する、という方向もあると思います。個人に
とっての吃音問題は、その人の吃音症状の程度、生活環境、吃音に対する意識
といった3つの要素の相互関係で決まるものです。症状も軽く、吃音に寛容な
職場で働く吃音者であれば、吃音の改善は必要ないかもしれません。しかし、
言葉やマナーに厳しい会社で日常的に接客や電話応対する人にとっては、吃音
症状の改善も必要であり、吃音の改善を願うのは自然な事だと思います。
 
 どのような方向で問題解決を図るかは個人の判断であり、吃音の受容や環境
の改善とともに、吃音症状の改善も選択枝の1つです。吃音問題の解決は上記
の3つの方策の組み合わせであり、決して1つではないという認識の上に立っ
て、以下では吃音症状の改善に絞って話しを進めてまいります。