13.吃音改善の意味とステップ


13.吃音改善の意味とステップ

 吃音の改善は一言で言えば「引き算」です。吃音時に起きていた、余計な反
応や動作が起きないようになれば良いのです。腹式呼吸で話すとか、特別な発
声法で話す必要はありません。不安や恐怖を感じながらも、吃っていない時と
同じように普通に話せればいい訳です。また、吃音改善には様々な定義やレベ
ルが考えられます。「今後死ぬまで、どんな場面でも1度も吃らない」という
意味での改善は不可能でしょうが、「日常生活で困らない」とか、「普通の人と
同じ程度に話せる」といったレベルでの改善は難しくありません。

 吃音改善の1つの意味は、吃る場面や頻度が少なくなる事です。具体的には、
苦手場面と苦手音が少なくなる事です。例えば、従来は吃っていた挨拶や自己
紹介の場面でまったく吃らなくなったり、挨拶や電話の中で言えなかった自分
の名前が言えるようになる事です。同じ苦手音でも、吃らない場面が増える事
です。吃るかどうかは、苦手場面と苦手音の2種類の条件刺激の合計値で決ま
ります。苦手音と苦手場面が少なくなるか、各々の苦手度が下がれば、吃らな
い場面が増え、酷く吃る場面や状況が極端に少なくなります。

 吃音改善のもう1つの意味が、吃音時に起こる症状が改善する事です。具体
的には、以下のような4種類の症状が軽くなるか消える事です。
1.随伴症状:声を出すために無意識又は意識的に行っている不自然な動作
2.身体反応:吃音時に起こる、内臓や呼吸器等の意思で制御できない反応
3.吃音症状:同じ音や言葉の連発、音が伸びる伸発、言葉が出ない難発等
4.心理反応:予期不安や吃音恐怖等、精神的動揺や心理的感情的な反応

 以上の4つの症状の改善は段階的に進みます。最初に改善されるのは、随伴
症状です。意識的に行っている随伴運動を止めて無理に発声するのを止めれば、
無意識の随伴症状も無くなります。次に、吃音の条件刺激に対する馴化の効果
やフィードバック効果によって、吃った時の身体反応(呼吸の乱れ、発汗、動
悸等)が弱くなり、消えて行きます。すると、話すための障害となっていた身
体反応が消えて普通に話せるようになり、結果として吃音症状も無くなります。
このように、例え吃っても、吃音時の症状が軽くなります。

 例会では、この第3段階までの改善を目的として練習します。最後の心理反
応は、吃音症状が消えても暫く残ります。吃音の記憶は消えないので不安や恐
怖はしばらく残りますが、心理反応があっても吃りません。心理反応を意識的
に消すのは困難なので、そのままにしておけば自然と消えて行きます。