14.例会練習の内容とアプローチ


14.例会練習の内容とアプローチ

 吃音改善のための練習を始めるとして、どんな練習を行なうかが非常に重要
です。吃音改善研究会では、吃音改善練習を練習内容とアプローチの2つの面
から、例会での練習を考えています。

 吃音矯正で最も一般的なのは、発声練習や呼吸法、講談や詩吟といった言語
訓練です。実際に声を出す練習であり、吃音の改善に効果があると考えられ、
伝統的に行われています。しかし、言語訓練に滑舌効果はありますが、吃音改
善効果は限定的です。吃ってなくても正常な発声や呼吸ができない人や、発声
練習でも吃る人には有効ですが、普通の吃音者には必要ない練習です。言語訓
練は、症状の重い人が初期段階で行うか、練習前のウォーミングアップと考え
て下さい。次に、吃音に対する不安や恐怖の消去を目的とした心理療法があり
ます。うつ病や不安神経症といった、吃音が原因の心理面の問題の解決には効
果があるでしょうが、吃音症状の改善効果は期待できないと思います。認知療
法や森田療法、催眠療法等、様々な心理療法による吃音治療でも、治療効果は
確認されていません。何より、心理療法は専門的な知識が必要で、実施できる
機関も少なく費用も高額で、セルフヘルプグループで行うには不向きです。

 吃音改善研究会で行うのは、日常生活と同じ場面を再現して行う行動療法的
な練習です。挨拶や電話といった苦手な場面を再現して、吃りながら話す訓練
を行い、馴化の効果とフィードバック効果で吃音を改善する訳です。そのため
に、電話機を使ったり、会議形式で報告したり、実際に近い場面を再現します。
吃音者自身が苦手な場面を再現して、主体的に練習する必要があります。この
行動療法的な練習が、セルフヘルプグループでの最適な方法だと思います。

 また、アプローチの方法としては抑制法と修正法という2つの考え方があり
ます。抑制法とは、吃り難い話し方で話す方法です。修正法は吃りながら話す
事により、自然な改善を目指します。吃音改善研究会では、吃音症状の程度で
2つのアプローチを使い分けます。つまり、酷く吃る段階の練習では、抑制法
による練習を行ない、軽く吃る程度の段階では修正法による練習を行います。

 吃音改善研究会の例会では、行動療法的な練習を修正法を基本として行い、
酷く吃る段階では抑制法のアプローチを行います。そのため、伝統的な抑制法
のテクニックをアレンジして、標準的な練習手順としてまとめています。練習
内容やアプローチの方法は、決して1つではありません。症状の程度や改善の
段階に応じて、最適な練習内容とアプローチを選択する必要があります。