15.改善練習の種類


15.改善練習の種類
 
 吃音の改善練習の種類を大きく分けると、独りでの個人練習、例会での集団
練習、日常生活の中での実戦練習の3つに分けられます。個人練習はやり易い
反面、改善効率が非常に悪い練習です。実戦練習は難易度が高過ぎるため、い
きなり行っても効果がなく、逆に悪化する恐れもあります。例会での集団練習
は、個人練習と実戦練習とのギャップを埋める練習です。例会でまったく吃ら
なくなったら例会練習は卒業で、次は実戦練習です。日常生活で僅かに吃りな
がらでも積極的に話せば、急激に改善が進む事となります。改善練習は例会練
習がメインで、個人練習が補助、そして実戦練習が最後の仕上げです。

 吃音改善研究会では例会練習を場面・状況と難易度の観点から、「朗読」「挨
拶・スピーチ」「ロールプレイング」という3つの種類に分けています。これ
は、一般的に、朗読、挨拶・スピーチ、ロールプレイングの順に難易度が高く
なるからです。朗読が特に苦手な人も居ますが、電話や挨拶といった場面と比
べると吃り難く、苦手な音や言葉も朗読では吃る頻度は低くなります。先ず、
朗読練習から始めて、電話や挨拶では吃る音や言葉でも、朗読では吃らない体
験をしてもらいます。そして、次第に難易度の高い場面の練習に移ります。

 次の挨拶・スピーチは、挨拶や自己紹介も含めたスピーチで、人前での一方
通行のコミュニケーションを指します。スピーチは定型的な話し方でも対応で
き、自分のペースで話す事が可能で、比較的練習の成果が出やすいのです。た
だ、挨拶や自己紹介は日常生活での頻度も高く、色々な場面で様々なバリエー
ションがあります。パターンが違えば、挨拶も難しくなりますので、パターン
毎の練習が必要です。この挨拶やスピーチが一通りできるようになると、日常
の吃音頻度も下がり、精神的な負担はかなり軽くなると思います。

 最後がロールプレイングですが、これは双方向のあらゆる場面・状況を包括
したものです。例えば、会議の司会進行、役員会での報告、電話の受信、質疑
応答といった、様々な種類とバリエーションがあり、整理不可能なためロール
プレイングとしてまとめています。このロールプレイングは、ある役割を演じ
ながら日常生活に近い状況設定で話す練習です。それだけに難易度も格段に高
くなり、日常生活での苦手な場面の再現となります。このロールプレイングは
種類が多く、個人によって苦手なものが違うので、各人が自分で場面や状況を
設定して練習する必要があり、様々な設定の練習が考えられます。なお、ロー
ルプレイングの練習で酷く吃るのであれば、難易度を下げて練習する事が肝心
です。職場や学校と同様に酷く吃っては、改善効果が働きません。