19.例会進行のポイント


19.例会進行のポイント

 吃音改善研究会の例会は、軽く吃りながら話す事により、結果として自然と
吃らなくなるといった方向での改善を目指しています。そして、例会の効果を
最大限に発揮するために、例会の進行は以下のような方針で行っています。
 
 例会では、各自の持ち時間を設定してタイマーによる時間管理を厳格に行い
ます。時間内なら何度吃っても、吃った個所で休止しても自由ですが、時間が
きたら終わりです。全員が公平で平等に練習できるよう、各自の個別練習では、
開始時にタイマーをスタートし、タイマーが鳴ればその時点で終了です。

 また、練習は短い練習を何度も繰返す分散練習を中心に行います。吃音者は
話し始めの瞬間が最も吃り易いので、短いサイクル練習によって吃音状態を何
度も再現するためです。1分間の自己紹介より10秒の挨拶を6回、3分間ス
ピーチを1回より1分間スピーチを3回、という考え方です。学習心理学の実
験でも、練習を連続して行うより、短い練習を何度も行なう分散練習の方が学
習効果が高い事が判っています。そのため、各自が好きな練習を行う個別練習
でも、基本の持ち時間は1回1分30秒という、短い時間に設定しています。
 
 そして、練習は簡単な場面から難しい場面へと、段階的に行います。単純な
自己紹介の後で、互いに名乗り合う挨拶をしたり、司会者が紹介した後で挨拶
したり、改善度合いに合わせた場面設定をします。また、吃音症状の重い人が
居る場合、自己紹介を全員で一斉に行ったり、抑制法で極端にゆっくり話した
り、全員が吃らずにできる練習を繰返した後で、段階的に難易度を上げて行い
ます。こうする事で、症状の重い人も吃らずに話せる場面や状況を体験し、改
善のモチベーションが持てるようになります。スポーツ心理学の実験でも、現
在の能力に対して110%の目標設定での練習が一番パフォーマンスが高い
とされています。吃音改善もスポーツトレーニングと同じです。

 最後に、吃音改善のためには1人当りの正味練習時間が非常に重要です。し
かし、ある程度の人数が居ないと日常に近い緊張感が作れないし、集団として
のダイナミズムもなくなります。そこで、吃音改善研究会では、全員が一斉に
朗読や挨拶を行う一斉練習をしたり、電話をしたいメンバー同士が自分の持ち
時間を合計して合同練習する、といった進行により時間効率を高めています。
また特に参加者が多い場合は、グループに分かれて進行したりもします。この
ような進行により、12名を超える参加人数でも、メンバー1人当りの正味練
習時間が30分以上確保できるように、工夫と効率化を図っています。