20.吃り易い話し方のパターン


20.吃り易い話し方のパターン

 例会練習では、日常生活と同じような話し方や吃り方をしてはいけません。
吃音者は、以下のような話し方の癖や吃音時の反応パターンといった、共通の
傾向を持っており、これが練習効果を阻害します。例会では、日常生活で何十
年と繰り返してきた同じパターンで話してはいけません。

 先ず、吃音者は自分が話す場面になると、直ぐ瞬間的に話そうとします。挨
拶するために前に立った瞬間、一呼吸置いたり、聴衆を見回したり、気持ちを
落ち着けたりする事なく、いきなり話し始めます。吃音の条件反応は、条件刺
激と発語意思が揃った瞬間に、千分の数秒単位のパルス状の電気信号として起
こります。この電気信号はしばらくすると弱くなりますが、吃音反応が始まっ
た瞬間に話そうとするため、神経細胞の興奮が最も強い瞬間に話す事になりま
す。結果として、一番吃り易い状況で話していることになります。
 
 また、吃音者は流暢性への欲求が強く、自分が理想とする流暢な話し方で最
初から話そうとします。そして、吃る前に一気に話してしまいたいという意識
も働き、自然と早口になってしまいます。結果として、吃り易い速度で話し、
吃りが目立つような話し方になっています。

 吃音者は、日常生活では吃音を避け、例え吃っても、それを隠そうとします。
語句の言い換え、手足による随伴運動、エーとかアーといった無意味音、息を
吸い込みながらの発声等、様々な不自然なテクニックを使って、話す事を最優
先します。そのため、吃音症状を隠しながら何とか話していても、不自然な発
声動作や悪い癖が条件付けられ、吃音の症状を複雑化させています。

 そして、吃音者は例え吃っても、話すのをなかなか止めようとしません。最
後まで話そうともがきます。症状の重い吃音者ほどこの傾向が強く、難発状態
のままで手や首を振ったり、口を震わせたりして無理に話そうと悪戦苦闘しま
す。この反応は、最後まで話そうと努力しているというより、吃音の条件反応
で制御不能に陥っているとも考えられます。吃音の発作が始まると、自ら解除
するのが難しくなり、酷く吃る事で吃音がより重くなってしまいます。

 以上のような傾向は、日常生活の本番の状態で話す場合、ある程度仕方ない
事情もありますが、このような話し方で練習しても吃音の改善はできません。
例会での練習では、日常生活で長年行ってきた話し方の悪い癖やパターン、無
意識の動作を止めて、改善効果が上がる練習をしなければなりません。