22.酷く吃った時の対応手順


22.酷く吃った時の対応手順

 吃音の改善を図るには、吃音の条件刺激のある苦手な場面を再現して話す練
習をしますが、酷く吃ると改善効果がないばかりか、吃音がより酷くなってし
まいます。酷く吃った際は、図のフローに従って対応して下さい。
 
 先ず、酷く吃ったり、吃りそうに感じたら、話すのを完全に止めて下さい。
症状の重い吃音者ほど、無理にでも発声しようとし、何時までも吃ってしまい、
5分でも10分でもブロッキングの状態のままで、自分でコントロールできな
くなってしまいます。酷く吃ったら、自分が吃った状態を自覚したまま、話す
意志は持ちながら、話そうとする一切の動作を停止して下さい。

 次に、自分の身体がどうなっているかを客観的に感じて下さい。自己モニタ
リングによるフィードバック効果で身体反応が自然に抑えられるようになり
ます。できれば、以前の状態と比較して変化を感じて下さい。良い変化が感じ
られれば、身体反応のコントロールがより進みます。このフィードバックは、
持ち時間の範囲であればいくら長くなっても構いません。話す事だけが練習で
はありません。吃音時の身体反応をフィードバックする事も効果的な練習です。
具体的には、以下のような身体反応を感じてフィードバックして下さい。
1)呼  吸 :息を吸ったままになっていないか?呼吸はできているか?
2)舌、口、顎:舌や口が強張っていないか?顎がガクガクしていないか?
3)動悸、脈拍:動悸や脈拍は正常か?ドキドキしていないか?
4)視線、視点:視線が固定してないか?相手を見て、視線を動かせるか?
5)肩や首、腕:肩が上がっていないか?首や腕が堅くなっていないか?

 そして、しばらく経って気持ちも落ち着いたら、また静かに話してみます。
自然に声が出るなら、そのまま話して下さい。声がまったく出ない場合は、そ
のままフィードバックを続けて下さい。また、軽く吃る程度であれば、吃った
ままで話して下さい。酷く吃る場合は、全ての動作を一旦リセットして、最初
からもう一度話してみるか、抑制法に切り替えて話して下さい。

 抑制法は伝統的な矯正法として民間矯正所で行われている方法で、日常生活
で応用するのは難しい方法ですが、うまく使うと吃音反応を弱める効果があり
ます。例会で酷く吃って話せない時に使うと良い方法です。吃音の条件刺激の
ある苦手な場面で、抑制法で吃らずに話す事により、吃音反応を強化する事な
く、吃音の条件刺激に慣れる効果(馴化)が働く訳です。吃音改善研究会では、
いくつかの代表的な抑制法を集約し、標準化しています。