23.抑制法(引き伸ばし)による発声


23.抑制法(引き伸ばし)による発声

 吃り難い話し方で話す抑制法には、様々な方法があります。手や腕でリズム
を取って話す「リズム法」、一定のゆっくりした等間隔の速度で話す「速度法」、
2つの音を連続して1つの音節として話す「2音1音節」、低い声やささやき
声で話す「ささやき法」、言葉の第1音をわざと連発して話す「随意吃音」等、
多くの方法があります。民間矯正所で広く行なわれている方法ですが、吃音症
状の重い人には有効な練習方法だと思います。ただ、民間矯正所では、日常生
活でもこの方法で話すという指導がされていたようですが、それは心理的な抵
抗が大きく、非現実的です。吃音改善研究会では、苦手場面で吃音が出ないよ
うにしながら苦手な条件刺激に慣れるための練習テクニックとして、例会の中
での活用を勧めています。苦手な条件刺激に直面しても吃らずに話す事により、
吃音を強化する事なく条件刺激に慣れる効果が働きます。抑制的な方法は色々
ありますが、吃音改善研究会では、音を引き伸ばしてゆっくり同じ速度で話す
方法をお勧めしています。1〜3の順番で段階的に活用して下さい。

<速度法&引き伸ばし法>一定の同じ速度でゆっくりと音を引き伸ばして話す

1)語句の第1音の母音を強調して引き伸ばし、極端にゆっくりと話す。
  「みぃ〜 な〜 さ〜 ん こぉ〜 ん〜 に〜 ち〜 は、わぁ〜 た〜 ・・・」
語句の最初の音の母音を強調して声を出し、全体にゆっくり同じ速度で話します。
1秒間に1.5音程度の極端にゆっくりした速度で話して下さい。

2)全体をゆっくりと引き伸ばして話す。
 「み〜な〜さ〜ん こ〜ん〜に〜ち〜は、 わ〜た〜く〜し〜は〜○〜○〜と・・」
1音1音を同じ速度で少し引き伸ばしながら、全体をゆっくりと話します。
1秒間に2〜2.5音程度の速度です。

3)速度を普通に近づけながら、ややゆっくりと話す。
 「み〜な〜さ〜ん こ〜ん〜に〜ち〜は、 わ〜た〜く〜し〜は ○〜○〜と〜申〜し・・」
 普段の速度よりややゆっくり程度、1秒間に3〜4音程度の速度で話します。
日常生活でも、それほど違和感のない速度です。

 抑制法は心理的な抵抗がありますが、例会での練習だと割り切って下さい。
抑制法で話す際は、吃る前の最初から最後まで、同じ方法で話して下さい。吃
ってから抑制法に切り替えるのは非常に困難です。それでも、最初の1音が出
ない場合は、手や指でリズムを取りながら話して下さい。そうすれば、かなり
症状の重い吃音者も声が出ます。吃音症状に合わせて、速度を上げて話して下
さい。第3段階の速度なら、日常生活で話しても不自然ではありません。