25.吃音改善のガイドライン


25.吃音改善のガイドライン

 例会の中での改善効果が出るには、3ヶ月程度の助走期間が必要です。例会
での改善効果は1回の例会でもあるのですが、その効果が小さいため、目に見
える形で改善効果は直ぐには表れません。また、改善効果は時間の経過ととも
に消えてしまいます。何回かの例会に連続参加して、改善効果が出る臨界点に
達して初めて、例会でまったく吃らずに話せる場面が出てきます。この期間が、
長い場合で3ヶ月ほどかかります。最初の3ヶ月は、休まず参加する事が重要
です。なお、日常生活の中でその変化が出るのは更に数ヶ月後となります。日
常生活には例会の場と比べて、多くのより強い条件刺激があるからです。

 吃音症状は、全ての場面で平均的に改善したり、ある日を境に一気に改善し
たりはしません。例会で練習した難易度の低い場面から、場面毎に改善効果が
表れます。ある場面で吃らなくなっても、別の違う場面や難易度の高い場面で
は変化がありません。非常に難易度の高い場面や、例会で再現できない特殊な
場面は最後まで残ります。また、苦手音も段階的に改善しますが、抽象的な条
件刺激である苦手音が全て消えるのは、全ての苦手場面が無くなった時です。

 日常生活で困らない程度の改善に要する期間は、年齢が大きく影響します。
10代20代の若い方は、半年や1年でも大きな改善が期待できますが、中高
年は時間がかかります。年齢が高いと、吃音の条件反応がより強化され、極端
に苦手な場面や苦手音があるからです。また、脳の神経細胞の可塑性(柔軟性)
が低く、神経細胞が変化するのに時間がかかるからです。

 苦手音は苦手な場面が改善できれば、自然と消えます。苦手音を一挙に消す
ための練習は無駄な練習になるので、苦手場面をなくす練習を優先して下さい。
ただ、具体的な特定の言葉や語句に限定した練習は、その言葉や語句に限って
効果はあります。苦手な言葉を積極的に話すのは、いい練習になります。

 最後に、吃音が大きく改善しても、再発の可能性があります。吃音の条件反
応回路は消えたように見えても完全に消えた訳ではなく、その痕跡が残ってい
ます。練習を急に止めたり、非常に強い条件刺激に遭遇したり、日常生活で話
す機会が極端に少なくなると、また酷く吃ってしまう場合があります。一旦吃
ると、それがキッカケとなり再発してしまう可能性があります。改善後でも、
非常に苦手な場面で酷く吃らないよう注意しながら、日常生活で積極的に話す
努力も必要です。そのため、吃音改善研究会では、不定期に参加できるスポッ
ト会員や卒業会員という制度を設けています。